本棚バトン よく読む、または思い入れのある5冊

1:「ぼくんち」 西原理恵子 ISBN:4091792715
マンガだけど好きなものは好き。いまだに1巻を読み始めたら止まらなくなって3巻まで行っちゃう。3巻の最後の方は神がかりとしか言いようがなくて、愛情と笑顔とあらゆる不幸がこれでもかってくらいに詰め込まれている。パステルカラーの柔らかでかわいらしい絵柄の中に、西原理恵子が救いを描こうと胸をかきむしりながら必死でペンを握る姿が痛いくらいに浮かんでくる。読んでる僕は胸が苦しくってページをめくるのが辛いのに顔はずっと笑顔で心はぼんやりとでも確かにあたたかくて、そして冗談ではなくて涙が止まらなくなっている。


最終話の二太のセリフ。もらわれていく船の上で故郷の港を眺めながら。


じいちゃん。
ぼく知ってんで。
こういう時は笑うんや。


あー打っててまた初めから読みたくなってきた。奇跡のマンガ。今まで生きてきたマンガの中で一番好き。っていうか読んできた読み物の中で一番好きかも。



2:「キッチン」 よしもとばなな ISBN:410135913X


私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。


っていう出だしがとにかく好き。この一行に全部つまってると思う。
孤独と喪失、人と一緒にいることのぬくもり。そんなこんなを予感させる、何ともすてきな一節ではないですか。(←ちょっぴりばなな文体)
うーん、すごい好きなんだけど、思ってることが上手く言葉にできないな。でもホントに大好きなのよ。



3:「赤毛のアン」 作:モンゴメリ 訳:村岡花子 (新潮のやつ) ISBN:4102113010
駒場の翻訳論(アイラブ野崎歓せんせー!)で「翻訳もの」についてレポートを書けと言われました。テーマは「私の溺愛する翻訳もの」で、翻訳された本は日本語がへんてこって言うか読みにくい。そんな印象のあった僕はびっくりするほど海外文学を読んでなかったので途方にくれました。オージーザス。
そんなこんなを団室でうだうだだべっていた時のこと、クラリネット吹きのNさん(とてもかわっててキュートな女の子)がこの本を薦めてくれたのでした。


だまされたと思って読んだら死ぬほど面白えええええええええええええ!それなりに分量ある本なのにあっという間に読み終えて、好き好きビーム全開でレポートっていうか読書感想文めいたうんこ文章をひねり出して提出。(意外にも良い評価をいただいたのも嬉しかった)
熱病にかかったみたいに一気に読んだ小説。最後は涙をぐすぐすすすりながら読みました。マシューが、マシューが!!
あの、「面白すぎて一気に読んでしまう」感覚は今でも忘れられません。ありがとう奇人のNさん。


息をのむほどに美しい豊穣な自然の情景,(カッコ付きではあるけど)「古き良き」小さな村の生活、そこに生きる人々,そして何よりも、そこにあらわれたアンという魅力的なにんじん赤毛の少女。その全部がきらきら輝いて、白い紙の上にインクの染みがあるだけなのに驚くほどみずみずしい映像が僕の脳裏に浮かびます。魔法ですイッツアマジックです。
モンゴメリもすごいけど、村岡花子さんの訳が良すぎるってのも絶対あると思う。日本人でよかったー。


あと、訳者あとがきでの村岡さんのコメントがすばらしいのも要チェックポイント。
「この作品を読む人々はルーシイ・モンゴメリが花ひらく乙女時代にたいして,いかに深い理解と同情をもっているかに驚くであろう。真昼の夢に包まれているような『赤毛のアン』の中には,航空機の時代になってもテレビジョンに親しみながらも失われない,永遠につづく若い女性の清純さとその清らかさから生まれるあこがれが呼吸している。」
これほどに「赤毛のアン」を的確に表した言葉もそう無いんじゃないでしょうか。



4:「この日本人に学びたい」 松尾スズキ ISBN:4947599731
活字で人は爆笑できる。そう教えてくれたのは松尾スズキでした。読みながら文字通り声をあげてゲラゲラ笑って、読み終わったらまた初めから読み直してこれまたゲラゲラ笑って。衝撃でした。



5:「好き好き大好き超愛してる」 舞城王太郎 ISBN:4062125684
舞城王太郎は全部好き。読んでると自分が加速してる見たいな錯覚に陥るくらいにテンポがいいしキザすぎてめまいがするくらいにかっこいいセリフだらけで、とにかく読んでてあまりに気持ちいい。それにエンターテイメントであろうとしているところがいい。伝えたいことを本気でビンビン伝えてくるのもいい。あまりにこの人の文章好きすぎて、気が付けばついつい真似してる(できてない)。


「好き好き大好き」は3回読んで3回泣いてる!ということで舞城作品のなかから代表として選ばさせていただきました。僕の中で今「祈り」っていう言葉を上手く使えるようになるのがマイブームなんだけど、その発端はこの本です。愛は祈りだ、僕は祈る。
それに前にも書いたけど題名がいいよね(id:shoshoshosho:20041109)。




以上、本棚バトンでした。
すてきな本ばかりだから、ぜひぜひ読んでみてください!とくにみんなが全然よんだことない「ぼくんち」を!貸すから!
バトンは誰に渡したらいいかわからないからここでストッープ。
おそまつでした。