銃声

駒場で発泡事件があった。突然の出来事に、現場は騒然だった。


腸の蠕動が弱まるからかなのか二日酔いになるとある程度体が回復するまで便意が訪れない。一度でも二日酔いになったことのある人であればうなずける話だと思う。
そのような経験のない人は「だから何なの?」と思うかもしれないが、二日酔いの日の便意の訪れとは裏を返せば「体がずいぶんと回復してきましたよ」のサインであるとも言えるのだ。二日酔いに苦しむ迷える子羊たちにとって、それはまさしく神の福音なのだとご理解頂きたい。
昨日いささか飲み過ぎた僕もそのご多分に漏れず、今日は夕方あたりまで便意を催すことがなかった。まだかまだか、祈るような気持ちで便意の到来を待つ。ふてくされてばかりの10代をすぎ分別もついて歳をとり、夢から夢と醒めぬまま僕らは未来の世界へ駆けていったりする。そして待ち焦がれた福音の訪れ!神が与えたもうた便意という名の恩寵!僕はその時、所属するオーケストラサークルの練習で駒場にいた。練習が休憩時間になったところで練習部屋を出、いそいそとトイレへ。


事件は唐突に起こった。用を足し終え振り返ると、発泡しているのだ。今まさにお尻を痛めて産んだばかりのかわいい子が「微炭酸」くらいのペースでぶくぶくと発泡しているのだ。ウン○コぶくぶく銃声バキューン!まあ銃声は嘘だが、眼前の衝撃にはそのくらいの擬音語が相応しい。何をどうやったら水中で発泡するようなウンコを作り出せると言うのか、自分の体が心配でならない。突然の出来事に現場(僕一人)は騒然だ。
みなは見たことがあるだろうか、ウ○ンコが泡を出している所を。トイレは一転レッツ・バスロマン、LUSHのある風景である。いや実際の所そこまで激しい発泡ではなかったけれど、シャンパンくらいの泡は十分に出ていた。まさか駒場のトイレでモエ・エ・シャンドンを目にするとは…。僕の体に今何が起きているというのか…。


青ざめた表情で練習部屋に戻ると、先までと変わらずみなが楽器の練習をし、あるいは思い思いに談笑していた。サークルの先輩が孤独の淵で発泡の脅威に一人怯えているというのに、何とのどかな光景か。まったく、人の気も知らず!先輩の表情に訪れた変化を敏感に察し「先輩、ウンコから泡が出たみたいな顔をしてますけどどうかしたんですか?」と案じるのが正しい振る舞いだろうそこは。いやはや実に気の利かない後輩たちである。お前らの血は何色だ!!


みなさんの「僕も/私もウンコから泡が出た」報告をお待ちしております。