CAT'S

ネコ舌は無敵の免罪符だ。熱いものを出された時に「俺、ネコ舌だから」と言えばそれだけで、何らとがめられることなくものが冷めるまでの時間を猶予される。ネコ舌だなんて甘えたこと言ってないでさっさと飲みなさいと、煮えたぎる熱湯を子供の口にねじこむ親など見たことがない。できることなら見たくない。


ネコ舌のマジックはそれが「完全な自己申告制」である点だろう。本当にネコ舌かどうかの客観的な証拠はどこにも存在せず、ただ本人が「過剰に熱がれ」ばそれでネコ舌の一丁上がりとなる。ちびまる子ちゃんに「鼻血に憧れるまる子」というエピソードがあったが、あの場合は鼻から出血という動かぬ証拠が必要だ。しかしネコ舌に限っては、それがたとえ熱がりの「ポーズ」であったとしてもそれで十分。やたらフーフー吹く、おそるおそるすするなどの小技を駆使すれば、そのネコ度はますます信憑性を増すだろう。


ネコ舌を見る周囲の目はとてもやさしい。少なくともつっけんどんな態度をとる人はまずいない。本人の努力では克服しようのないものだし、自分への害はほとんどゼロ、そこに目くじらを立てても仕方ないのだから。それに「ネコ」という言葉の響きがほのかにかわいらしいことも手伝っているのかもしれない。ともすればネコ舌、それは「かわいらしい弱点」として当人の好感度を上げる道具にすらなりうるのではないか。


以上の議論から明らかなように、ロリコンの人は自分のことを「年齢ネコ舌」と称すれば良いと言える。ロリコン、これはネコ舌と同じく完全な自己申告制であり、かつ性に対する根源的な嗜好なのだから本人の努力でどうこうできるものではない。だからこそ、年齢ネコ舌。そこではロリコンという言葉が含むネガティブな意味合いは影を潜め、むしろネコ独特の愛くるしさが漂い始める。カミングアウトによって周囲から蔑まれるどころかむしろ「なんだかかわいらしい」とほがらかな視線を注がれ、喉もとをゴロゴロとなで始められること間違いなし。ネコ舌は無敵の免罪符だ。


その他、小さな胸が好きな場合は「おっぱいネコ舌」、背の低い子が好きな場合は「身長ネコ舌」などバリエーションも抱負。ハゲちらかったその頭髪も「ネコ舌ヘアー」と言い換えればそれだけでお釣りが来そうだ。どこに何を支払ったのかはよくわからないが。
あるいは、テストで点数が悪いときは点数ネコ舌、貧乏を称して金銭ネコ舌とうそぶくことも可能だろう。ただしこの場合、落第や借金返済などが決して自称「ネコ舌」を許さない点で応用に難ありと言わざるを得ない。


以上、ネコ舌の可能性について考えてみた。