慕情

いやはや美味しいのなんの。何が?もちろん病院の地下食堂が。



霜月を通じての精神科研修期間は本来の所属を離れ近隣の精神科病院へ出航していたため、師走の訪れと共にいただく久方ぶりの食堂メニュー、つまり鶏の唐揚げアジアンソース・白ご飯・大根と竹輪のみそ汁・茄子の素揚げ・大根の漬け物。美味のファンファーレが脳髄に鳴り響く。うまい、この一言に尽きる。この美味は音楽だ、ソウル・ミュージックだ。渡り鳥がオアシスから一斉に飛びだったときの羽音それぞれが不可欠の要素を構成し、完璧なまでに調和した音楽を奏でているところを想像していただきたい。それはつまり全盛期のモータウン・レコード



客観的に見ても出先の食堂で供されたランチメニューより、今ここでこうして食べている昼餉の方が明らかに食事としてのクオリティが高い。その事実を感謝と共に認めない理由がどこにあろう。しかし私の色眼鏡は、本日のBランチがもたらした喜びを、客観的な味の差ひとつに還元することを決して許さない。ランチを乗せた盆の上には明らかに値段、品質、お手頃感を超えた「味の差」があった。半年間食べ続け慣れ親しんだあの味がもたらす郷愁の情があった。私が食堂のご飯をいかに愛しているかは以前にも述べたが(id:shoshoshosho:20071014)、まさにそこに満ちていたのは習慣に導かれる麻薬じみた味覚の快楽。食堂にいた他客の目には鮎の丸干しにかぶりつき涙を流す京極万太郎の姿が重なったことだろう。



以上が今日から始まった産婦人科研修の感想だ。期間は1ヶ月と短いけれど頑張ろうと思う。