サイフ

話のそもそもは16日の日曜日、懐かしの本郷お馴染みモンテローザビルは1階の魚民、板尾創路南海キャンディーズしずちゃんを足して2で割った顔立ちで名を馳せるmumemoさんとビールなどいただき程よく酔っぱらう。終電などとっくのとうに、クワバタオハラの特にクワバタさんを見ているときの私の笑い声レベルでどこにもなく、かといって春の夜はあと数時間で明けようとしている。さすらばここはいざ仮眠をとらん、本郷三丁目駅近くのマンガ喫茶にカミングセンチュリー(←仮眠とかかってますよ!)、ピアノの森嬢王もやしもんの新巻などをざっとひと読み。
ここまではよかった。ビールは美味く本郷は懐かしく、mumemoさんに会うのも1年ぶりくらい。ピアノの森は相も変わらずびっくりするくらいに面白い。づくしだった、楽しいことづくしだった。


(中略)


何ということでしょう。中略の合間に財布を盗まれた(としか考えようのない)私は店員さんに泣きつき、おら体っこさ売って現金さこさえてぐるから待っててけろ…と料金は後払いのままひとまず交叉点の交番へ。安息日も関わらず都の平安のため身を粉にして働いていらっしゃる本官の方お二人にことのあらましを説明、当該のマンガ喫茶と派出所の間で交わされる法律上・業務上のプロブレムなどを何度か仲介しつつ、マンガ喫茶に備えられた防犯ビデオを検証する許可をようやく得たのだった。嗚呼、そこには盗っ人の姿が。


無防備だった私も確かに悪い。ムチムチした肌、肉付き良く色味にあふれた唇。全身にみなぎるムチムチした若さをムチムチともてあましムチムチした夜の街をムチムチ濶歩していたら、性的被害に遭う確率も高まるに違いない。アルコール効果のいたずらに手伝い、机の上に財布を放置したまま寝入るという、言ってみればムチムチ感のムチムチ炒めムチムチソース和えレベルの愚挙に出てしまった私に責任の一端も無くはない、いや、あるよ、あるよなあ…。自戒に駆られつつも、アホ面下げて防犯カメラに写されるいかにもブリーフ派然とした、年の頃40代かといった栄養状態の悪そうな男の顔を見るにつけ高まる怒りを押さえられない。お前なんか全っ然ムチムチしてないわ!死ね!押さえきれないこの気持ち今、涙ぐみそう…。不覚にも寝入ったばかりに悔恨の爪を噛む私(←寝入るとネイルでかかってますよ!)。
私の財布をチラチラうかがう湿気に満ちたいやらしい視線がモニターに映し出される。お前なんかカップラーメンの食べ過ぎで乳毛が2本生えろ!


百歩ゆずって現金を盗むのは構わないとしても運転免許証や保険証といった、なくなったら持ち主が本当に困るものに関してはそっと机に置くなり警察に届るなり、店を出てすぐの場所に捨てるなり、そういった類の対応で締めるのが人間としてのマナーではないだろうか。朝起きて財布がなくなっていたとしても、免許証はきちんと残されていたならば「ああ、お金は盗られてしまったけれど、ムチってたこちらにも責任がなくはないし、今回は盗ったのがいい人でよかったよかった。あはれ義賊であることだなぁ。」くらいには寛大の精神を発揮できるに違いない。
財布の中身をごっそり盗って返却しないあったり、あのこそ泥はまさしく小物の中の小物。防犯カメラに顔は残されているのだけれど、そもそもそれがどこの誰なのか分からないというジレンマ。お願い、免許と保険証だけでいいいから戻ってきて…。