marriage

ソウル・フラワー・ユニオン曽我部恵一BANDが対バンをする。した。これはもはやビッグバン。分かっている、このペアを見せられたところで、それはここをご覧になるほとんどの人にとって全くありがたみのないブッキングに違いない。それでもやはりこの組み合わせは私にとって一つのレボリューション、農業革命と産業革命が情報革命を引き連れてやってきたくらいにインパクトのある出来事だ。そうだなあ、毎号穴の空くほど姉キャンを読んでいる人が「エビちゃんモエちゃん、恋とスイーツ、そして女の友情!! お洋服にエステも盛りだくさん♪ 3泊4日パリ2人旅〜」というTVプログラムを知ったときの興奮を想像してもらえれば良いかもしれない。卒倒寸前である。中川敬曽我部恵一、私の心の2大ビッゲスト・ロック・スターが一堂に会し美容ヨガだとかピーリングだとかにうつつをぬかすのだ。そんなのチケットとらない方がどうかしている。


両組のライブのすばらしさに関しては今更何を述べようかというところなので(両方とも間違いなく日本最高峰だと思う)割愛するが*1、両者を同時に鑑賞し、体験し、味わったことで見えてきたもの。それはソウル・フラワーは楽団名の通り「ユニオン」の音を、曽我部恵一BANDもやはり名の如く「バンド」の音を鳴らしているということ。だった。のかなあ…。
自信なさげにおずおずと述べさせていただくと、曽我部バンドの音は「一緒になろう」って音として聞こえる。バンド4人で解け合ってひとつになって、演者も客席の境界が融解してひとつになって。そんな音楽。色んな線引きを全部なくしてあなたと一緒くたに混じり合いたい。そんな合唱が響き渡る、愛し合う恋人たちの音楽。「バンド」という、そして「会場」というひとつの生命体が鳴らす音楽。
一方のソウル・フラワーは、上手く言えないんだけれど、なんというのかなあ、やっぱり「連帯」なんだな。曽我部さんのときと同じように会場は大声を張り上げ合唱し、踊る。だけれどそこでは「個人」という輪郭が個々人から絶対に消えない。団結、紐帯、連合を謳いあげるための音楽。お前はお前の村の踊りを踊れっていう、祭りの、共同体の音楽。
とまれ両方とも最高のライブだった。対バンとしてのマリアージュも最高で、しかも僕の青春時代から現在まで一貫して常に一番星のスターが2人並んでいて、春という季節に、満開に咲いた桜にこれ以上なく似つかわしい夢のような空間だった。あえて難を言えばドラムの遅刻でライブの開始が2時間20分も遅れてしまったことと、そのドラムが失神してしまって予定より大幅に少ない8曲しか聞けなかったことがいささか残念だった。あ、ごめんごめん、それはX JAPANだ。


大学生の頃していた塾講師のアルバイト、その時に少し教えた女の子が結婚をした。その子は僕と同じ大学・学部に入ったので、発言に正確を期すならば元教え子の現後輩が学生結婚をしてお嫁さんになりてんとう虫のサンバを踊り狂いながらウェディングケーキに顔からダイブしキャットファイトを繰り広げた。ということになる。
今日はお昼にその子の結婚記念パーティーがあり、上記のライブへ行く前に懐かしの母校へと足を運んだ。研究棟の14階でくだらない講義があるときの駆け込み寺としても名高い13階のイタリアン・レストラン。かっこ良くて頭のよさそうな旦那さんと、昔からそんなに変わったようには見えない相変わらずの、でもおめかししてとてもきれいな新婦。仲間内であつまった、あたたかな手作り感が遠赤外線のようにすみずみまで行き届いた、家族で入る冬のこたつみたいにほのぼのとして幸せな会だった。特に新郎による20分にわたるドラム・ソロは圧巻だった。おっと、それもXだ。
あの会場で鳴っていたのは解け混じり合う音楽なのか、肩を組み連帯する音楽なのか。2人の門出を祝う人たちは、新郎新婦は、BGMの無い会場の中でどんな音を聞いていたのだろう。それは本人以外には誰にも分からないことなのだけれど、何だか全部が聞こえたような気がする。混じったり分離したり連帯したり反目したり見つめ合ったり。新郎新婦だけでなくてそれをとりまく人たちも巻き込んで音楽は進む。いつも思うけれど、ただただ、結婚ってすごい。まさにArt of Lifeだ。しつこくXだ。


旧姓Sさん、旦那さん、心から結婚おめでとうございます。

*1:ちなみに曽我部恵一BANDのセットリストはこちらhttp://d.hatena.ne.jp/live-sokabe/20080329/1206804729。『キラキラ』って新曲が、聞いてる3分の間に死んじゃうんじゃないかってくらいよかった。曽我部の日記はこんな感じ。キラキラ!のサンプルもアルバムのページから聞けます。http://www.sokabekeiichi.com/s_diary/?mon=200803&day=30