Vaccine

舞台は近所にできたて線路をはさんですぐそこ、鳴り物入りでおらが町にやってきたイトーヨーカドー。後述のよんどころない事情でキャッシュを必要とする私は彼の地のATMで3万円を引きおろしレシートを受け取り残金を確認、イヤホンを着け音楽に興じていたためにアラーム音にもとんと気づかず、かくして気前よく3万円をATMに寄付したのだった。労なくして3万円を無くした私…。死にたい…。
そういえば。ゴールデンウィーク特有のゴールドさをあまさず利用し実現するはずの、かねてからの念願だった万里の長城行きは、新型インフルエンザの流行に伴う医療従事者特有の倫理感から直前でキャンセル。豚フルエンザのあおりでキャンセル料7万円を失う羽目になった私…。死にたい…。


中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)

中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)


賢明な諸氏ならご理解の通り、つまり私はこの1週間で10万円をドブに捨てた計算になる。3万+7万=10万。そんな小学校4年生レベルの足し算を遂行しては現実味あふれるリアルな損失額に身もそぞろ、自身の卓越した暗算能力をうらめしく思いつつ明けても暮れても空白の10万円のことを考えている。10万円…ワクチン…10万円…。
不幸は自己増殖するらしく、状況はより一層不幸性を増しつつある。新たな職場に訪れた早速の新人いびり、5月11日には振り込まれるはずの4月分給与がいつまでたっても全く口座に入金されないのだ。現在の預金残高の見るも無惨なありさまたるやそれだけである種のアミューズメントの様相を呈している。10万円…ワクチン…10万円…。知らぬ間に私とすれ違った名も知らぬどっかの社長が貧乏神なすりつけてったんじゃねえのかコノヤロー、そうとしか思えない。思えないのねん。


中国に行けなかったことは時のさだめだからこればかりは未練もなくはないが仕方ないにせよ、問題は3万円だ。ごく普通のATMを相手に、虎の子の3万円をシンプルきわまりないやり方でバカ正直に失ってしまった。これは悔やんでも悔やみきれない。
いやさ、自分の財布が傷むとかそういうことではないのよ。つまりワクチンだ。地球の各地で困窮にあえぐ子供達にワクチンを贈ろう。そんな思いから引き出したワクチン代、福沢諭吉の代わりにアグネス・チャン黒柳徹子が描かれていそうなくらいにチャリティの精神に満ち満ちたあのピカピカの3万円。ワクチン…。まるで嘘みチャイナ私の不注意で失ってしまった3万円、つまりワクチン…。本来なら貧困の淵にある人たちに届いているはずのお金が、ワクチンが…。忘れチャイナと言われても、救えたはずの命の叫びが私の胸を締めつけて…そして気がつけば中国への未練が…。


更新のない間、楽しいことももちろんあった。
中国行かずのスロウ・ボートに乗った私はもてあましたゴールデンウィークを好機に、rocket or chiritoriの復活ライブを目撃する機会@廃校フェスに恵まれたのだ。手作り感あふれるキュートなパフォーマンスはありし日の甘酸っぱさと相まって、そこにしか現れえないポップネスを体育館中に振りまいていた。Tシャツ買っちゃった。
その他にもイベントは盛りだくさん、実家に帰り小中学校の同級生であったところの510くん、つーちゃん、AKとうだうだと遊んだり、ワンピース53冊を衝動的に大人買いし読破し夜を忘れ読み明かし胸を高鳴らせてはボロボロ泣いたりと総じて充実の黄金週間を送ったのであった。ただ一つ心残りがあるとすれば、そう、さんまんえ、でなくてワクチンが…。