ROCK IN JAPAN

5年ぶりにひたちなかに行ってきました。海浜公園は本当に快適だった!平地にあふれ夜風が心地よく、晴ればかりで芝生は快適。雨と岩肌とどろんこで構成されているフジロックがいかに不便なのか肌で感じました(だからこそ死ぬほど楽しいのだけれど)。
全体に「ルールを作らない代わりにモラルを植えつけよう」という向きが強くて、初日には開催者の度量の狭さと周到さを感じたものの、しかしまるで免疫のない人も含めた若年者が5万人も集まるんだからそうでもしないとどうにもならないんでしょうと思い直し、だとすれば度量が狭いのではなくて「敢えてのパターナリズム」ということになるのでしょうか。むしろナイスバランス、すごいぞロッキン。


ダイブ禁止の問題もややこしそうですね。ダイブ禁止には賛成なのですが、アナウンスの仕方が思いっきり間違ってるのではないかと。否定しようのない正当な理由(怪我があるといけない)を提示したは良いが、その正当性がゆえ宙吊りになってしまったオーディエンス側の「ダイブしたい」気持ちに解決をつけないまま、あろうことか観客の「善意」と「道徳心」をはかる踏み絵として「ダイブ禁止」を機能させようとしている。「こんなに筋の通った理由があるのに、それでもあなたはダイブするんですか?それが本当の『ロック』ですか?」というなかば反語めいた脅迫状を、長年にわたってつちかわれたロッキンオン・メソッド(大義名分と俗情の波状攻撃で読み手を袋小路に追い込む)を十二分に発揮させながら渋谷さんは年端もいかない若者達に投げ込んだわけで、それを受けたらモヤモヤするしかないでしょう、ダイブしたいっ子たちは。吉牛とか食べさせて放っておけば花壇とか選挙カーとかでっかいプリンとか、そこら中にダイブするような人たちなんだから。寝起きに…ダイブ!脳みそ常に震わせて荒々と…ダイブ!松本に相談しようかな、でも多分冷やかされるからやめ…ダイブ!


とまれ、「解消され得ない抑圧」を自分たちから作り出しておいて「抑圧を感じるあなたの心が汚れているのです」だなんて、いち観客として、主催者側から道義にもとる宗教裁判をけしかけられているように感じました。そういうのを背負ってこその主催者だろうと。覚悟を決めろよと。これは俺たちのわがままだけれど文句は言わせないよ、刃向かう奴は徹底的に排除するよ?というヒールの役をかって出てこそ長期的な信頼が得られるように感じるのです。ホルモンまでは良かったものの、なぜ次に恋心(KOI-GOKORO)なのか私にもわからないのです。


などと否定的に書いているけれど、会全体の雰囲気はピースフルでとても良かったです。全体の幸せのために考え抜かれたものすごくしあわせで快適な空間だと思いました。これ以上が想像できないからかえってもうちょっと不便な方が楽しいなあくらいに。そこには音楽しか無い感じがしました。もういっそ、ロックフェスに行ってみたら音を聞く余裕なんてひとつもなかった、くらいに劣悪な環境の方が面白いのかもしれない。


みんなとにかく若い!異文化に触れてきたと言いますか、ガリバーがたどり着いた次の島は「キッズの国」でした…というかもう日頃の常識がまるで通用せず、それが不便でもあり快くもあり、実に貴重な経験になりました。異世界でした。20代後半と20代前半はこうも違うのか。
聞いてりゃ偉いってもんでもないとはいっても、みんなびっくりするくらい海の向こうの音楽を聞いていない(同室のべ7名中、おそらく奇跡のゼロ!)のにもくりびつ。日本でロックもパンクもスカもダブも一通り自給自足できてしまうというすごさなのか…ダイブ!


同室いただいた方のおすすめもあったので10-FEETとか聞いてはみたがピンと来ず、僕はこの手の音楽ではもう一生盛り上がれないと…いや嘘をつきました、もう盛り上がれないんじゃなくて未だかつて一度も盛り上がれなかったであろうことがわかりました。3ピース連帯パンクではくて、中産階級用のキラキラしたロック・ポップスが今も昔も好きなんです。つまりカジヒデキサンボマスターが良かったんです。その他、ソウルフラワーとソカバンはいつもどおり素晴らしかったです。


一度見てみたかった木村カエラ(超絶的にかわいかった!)、HALCALI(ものすごくブサぶさいくだった!それがまたかわいかった!)を見れたのも嬉しかった。
YAZAWAは無敵でした。パンフレットには矢沢氏直々に「観客に伝えたい気持ちは感謝…というよりサンキュー!」とかなり難解なメッセージが書かれており、いざふたを開けてみたら永チャンはステージ上から「ありがとう!」と連呼していました。何が正解なのか考えるなんてYAZAWAの前では野暮というものでしょう。実際に、はるか最高のパフォーマンスでした。


発見としては毛皮のマリーズのライブは圧倒的にすばらしく感動的ですらありました。こんなかっこいいバンドひさびさだよ!とにかくマリーズがよかった。女性ベーシストがかわいく音は端正で、ドラムが勢い一発、ギターに芸があり、何よりヴォーカルに匂いたつ狂気があった。曲も良い。あとはtelephonesとa flood of circle、おまけでダイノジのDJが楽しかった。
3日間それぞれの感想は今度書くことにして、ひとまずマリーズのこの曲でお別れです。ではでは。


毛皮のマリーズ「恋をこえろ」

最高にロマンティックで最高にキチガイじみたラブソング。むちゃくちゃ盛り上がった!