2006年を振り返る

今更ながら2006年に見聞きしたもので印象的なものをメモ。5年後に見返してほくそ笑んでやるぜ!今年はあまり新譜を買っていない(お金が全然無い…)ので、2006年発にはこだわらずに。

アルバム


1:ソウル・フラワー・モノノケ・サミットデラシネ・チンドン」

デラシネ・チンドン

デラシネ・チンドン

流行歌のパワー、水平化の思想、毎日に少しだけ「お祭り」を持ち込むための絶妙のユーモア、ふくよかな楽器の音色、暖かなダミ声、全てが最高だった。良きメロディーと身体性を伴った歌詞があれば、他にはもう何もいらない。そんな簡単なことを絶妙に教えてくれたアルバム。正直、ソウル・フラワー・ユニオンのオリジナルアルバムより圧倒的に良い。


2:Arctic Monkeys「Whatever People Say I Am, That's What I'm Not」

ベタベタだけれどこれはさすがに文句なし。前情報の全く無い状態でタワレコで試聴し、その瞬間にレジへ持って行くという、「リアル試聴買い」はこのCDだけだった。極めて不勉強な一年であったものの2006のキーワードは「批評性」だと勝手に思っているのだが、このアルバムには批評性と1stの初期衝動が絶妙に混ざり合っていて、何度聞いても飽きないのに何度聞いても興奮できる。


3:Cournelius「Sensuous」

Sensuous

Sensuous

音に対する驚きや喜びがそのまま詰まっているような、発見と感動に満ちたひらめきの1枚。一音一音の手触りや、その音を選んだ瞬間の小山田圭吾の喜びまでもが一々伝わってくるよう。惜しむらくは彼ののメロディーセンスが完全に「アメリカ人」「ディズニー」であって、浪花節と歌謡曲が大好きな私には「リピータビリティ」の面で上記2枚(バリバリの和物とイギリス物)に一歩譲るかという所。それにしても『Music』2:55あたりの高揚感は何ものにも代え難い。


4:John Coltrane「Giant Steps」

Giant Steps

Giant Steps

どうだろう、この「年代に囚われなさ」「王道過ぎても良いモノは良いと言える態度」を通じて皆さんからの好感度を挙げようという打算に満ちた第4位は。しかし、このアルバムを今年はめっぽう聴いたから仕方ないのだ。『Mr.CP』なしで卒業試験を乗り切ることは不可能だっただろう。


5:曽我部恵一「Love City」

ラブシティ

ラブシティ

佳曲揃いの最新アルバム。白眉は2曲目『3つの部屋』。リピートしまくり。ソロ1stで「戦争にはちょっと反対さ」と夢見がちでナイーブなことを(自分では随分大人になったつもりで!)言っていた曽我部恵一も、随分大人になりました、みたいな一枚。そう言うと全然褒めていないように聞こえるけれど、本当に良いアルバム。雑で荒削りなアルバム(褒め言葉です)を連発した曽我部が、現実の中で何を夢見るのかを極めて戦略的に見つめ(この点でArctic Monkeysとすごく似ていると思う)、それを実現するだけの身体能力を身につけ、ついに完成!という感がある。でも本当は「Strawberry」が一番好き。


以下順位のみ。


6:Free Soul シリーズ(本当のことを言えばこのシリーズばかり聞いていた)
7:The Strokes「First Impressions Of Earth」(2ndの方が好き)
8:aiko「彼女」id:shoshoshosho:20060903)
9:SLY MONGOOSE「Tip Of The Tongue State」(超セクシー)
10:NATSUMEN「NEVER WEAR OUT yOUR SUMMER xxx !!!」(活動休止とは…)
次点:レッチリ「Stadium Arcadium」、宇多田ヒカルULTRA BLUE」、YUKI「WAVE」


驚くほど王道ばかりでびっくり。年をとったなあ。

曲単位で


1:capsule『dreamin dreamin』

FRUITS CLiPPER

FRUITS CLiPPER

超よかった。アルバム全体で最高だったけれど、アルバム単位というよりは、ヴォーカル入りの曲を聴きまくったので曲単位での1位。2曲目『FRUITS CLiPPER』の2:33までじらしにじらしてヴォーカルが「爆発」する瞬間に名盤決定。
これまでの路線(SF三部作だっけ?)を軽々と飛び越えてハウス&ビッグビートへ。今まで「ない振り」をし続けてきた表現の欲望や内面の吐露への情動がついにあふれ出し本人たちにも操縦が聞かなくなったという印象。
前作までに比べて明らかに情念の増したこしじまとしこのヴォーカルも、中田ヤスタカが今までの「ファンシー」なる「みんなはあたしのことを夢見がちって言うけれど、あたしにとってはここ(ファンシーの世界)が現実なの」路線から離れ、ハウス・ビッグビートという「あたしだってここが現実ではないのは分かっているけれど、それでも音楽がなっている間は夢を見られる/見ていたいわ」というジャンルを選んだことも決して偶然ではないだろう。
批評誘発性が最も高い、という点で最も高い批評性を発揮したのはcapsuleだったように思う。2月に出る次のアルバムでは絶対に最高にスウィートでセンチメンタリズム全開のキャリア最高傑作が生まれる。はず。
Sugarless GiRL

Sugarless GiRL

ここまで真正面から「からだ」を前景に出したジャケットはcapsule史上初で、しかしそれを「からだ」ではなくて「もの」として見たときの輪郭は極めてやわらかく女性的(当たり前だけれど…)。これを見るだけで身体性とスウィートネスを合わせた完全無欠アルバムになるってわかる。「夢の中で暮らす少女」が服を脱ぎ現実と対峙する。しかもタイトルに「Sugarless」との皮肉付き。楽しみ。


2:Terry Callier『Ordinary Joe』

Turn You to Love

Turn You to Love

パーフェクトとしか言いようがない。Nujabesがネタに使っている曲も良いけれど、オリジナルのすばらしさは筆舌に尽くしがたい。1979年発らしい。


3:クチロロ『メローメロー』

口ロロ

口ロロ

世界最高のポップソング。トラックのアイデア、素朴でひねくれたメロディ、「1曲」としてのまとまり、実はすっごいソウルフルなのにちょびっと照れちゃうところ、全て大好き。2004年の曲だけれどひたすら聞いた。今年はずーっとクチロロを聞いていた気がする。
アブストラクトに行かないで、いつまでもポップソングを書き続けていてくれたらどれだけすばらしいだろう。


以下順位のみ。年代関係なしの1ミュージシャン1曲で。


4:曽我部恵一『3つの部屋』
5:John Coltrane『Mr P.C.』
6:Cornelius『Music』
7:ソウル・フラワー・モノノケ・サミット『ああわからない』
8:Arctic Monkeys『You Probably Couldn't See for the Lights but You Were Looking Straight at Me』
9:NATSUMEN『Pills to Kill ma August』
10:チャットモンチー『ハナノユメ』
11:The Strokes『Razorblade』
12:aiko『キラキラ』
13:GO!GO! 7188『神様のヒマ潰し』
14:Jeffree『One Last Chance』
15:CSS『Let's Make Love And Listen To Death From Above』
16:Either/Orchestra『Amlak ab?t ab?t』
17:宇多田ヒカル『Making Love』
18:Keith Jarrett『Kolon Concert の Part II C』
19:bonobos『beautiful』
20:SLY MONGOOSE『Wrench In My Head』


今年全然聞いてないなー。

ライブ


1:フジロック
ヤマコー、tksnさんと。あの空気は一度味わうともう。フィールドオブヘヴンで越後ビールを売っているサオリさんが超かわいいくて仕方ないので07年も毎年のように「あ、お兄さんどうもー」「あ、どもども」って越後ビールを飲みたい。ここを読んでいるサオリさん関連の方、是非ご連絡を!


2:U2さいたまスーパーアリーナ
tksnさんにチケットを用意していただいて。U2の歌は正直そこまで好きではないが、あのライブのパワーはまさしく世界最強だとひたすら感動した。すごすぎた。


3:安室奈美恵@国立代々木体育館
日本のディーヴァ!かっこよすぎた。お誘いいただいたアキさん本当にありがとうございます。

今年度ベスト・ミュージシャン


ぶっちぎりで曽我部恵一
曽我部恵一バンドのライブの発するキラメキと熱さたるや。音楽雑誌には「Love City」をソロ・キャリア・ベストとする言説が多いけれど、本当にすごいのは「Strawberry」に始まるロックンロール・モードがついに頂点に到達した今のライブだと思う。目ん玉飛び出るわ。何回か見たけれど、mumemoさんと行った下北QUEのやつがベストかな。


ああ、長くなったけど面白かった(自分だけ)。