「M1」のMは「松本」のMではないか

まあクリスマス・イヴの最大関心事はM-1グランプリという、日本人男子の平均的な聖夜スタイルに忠実な私であるからしてM1の感想を書こう。と思ったけれど今年心からゲラゲラ笑えたのはチュートリアルくらいだ。あと部分的には「マグロをはく」「西日」「うがいてあらい」が最高だった。


麒麟が僕はどうにも苦手というか全然面白いと思わなくて(ボケが全部理詰めで漫才素人の僕でも先がほとんど読めるし驚きや発見が何もないから)、彼らのせいで決勝が一枠減っているかと思うと、爆笑の機会が一つ失われているかと思うと残念でならない。一番の大ネタが「物まねを似せない」というのはお粗末すぎる。トータルテンボスも好きではない。「聞き慣れない言葉を選ぶこと」が自己目的化しているように思い、僕の一番好きな「発想への驚き」が前景化してこない。内モモ叩くのとかレポーターの食いつきポイントずらしとか普通に面白いのに。「ボキャブラリーを豊富に使わないと」という藤田のツッコミは自身への墓標を刻むかに聞こえた。


チュートリアルは発見に満ちていて本当によかった。まず、テーマは何でも良くて「価値観/背景知識の違い」なる構造自体を提示することのおもしろさがあった。おそらく彼らは「横断歩道を赤で渡ってしまった」でも「メアドを変えた」でも「それをありふれたことと思うAさんと、なぜだか思い入れの強すぎるBさん」で同じクオリティの作品をいくらでも量産できるはずだ。お前マジで赤で渡りおったんか?!マジでか、ど、ど、どんな風に?い、今一番はやりのスタイルやんけ!(目を見開いて)みたいに。いや僕が書くと超つまらないけれど。とにかくフォーマットを作った人は強い!
「頭がイッちゃった狂っている人(笑えよ。アハハ。など)」「道徳観念の欠如(行きずりの女を抱いたよ)」の面白さをテレビで堂々と表現し、しかも大笑いをかっさらったのも感動的だったし、色々な意味で「演技力」がどれだけ人を惹き付けるかも、勢いってすごいということも、とにかくチュートリアルばっかり目立った。キャラクターの内面化が出来ていると、トータルテンボスと違って不自然な言葉選びにも必然性が宿っていて、安心してお腹を抱えて爆笑できる。


勝手な順位点数付け。(多分みんなそうだけれど、これが楽しい!)
自分だったら10点にもならない一億人が自分基準だけで無責任な評論家になれるブログって本当にすてき。

【一発目】
1:チュートリアル(93点)
パターンもの。でもやっぱ面白いもんは面白い!


2:フットボールアワー(90点)
見たことあったけれど、面白かった。


3:笑い飯(88点)
後半の「うがいてあらい」はやっぱりすごかった。面白さだけで言ったら圧倒的に一番面白い。麒麟に一点差で負けたけれど、麒麟のMAXと笑い飯のminでは麒麟の評価の方が高くなるという事実に何より驚いた。桁が違うのに。漫才後のコメントも圧倒的に面白かったし。笑い飯ますだおかだ麒麟に一度でも負けていることの意味が全くわからない。


4:POISON GIRL BAND(87点)
マグロをはいた瞬間はすごかった。一組目だったとはいえ評価が低すぎないか。


5:ザ・プラン9(85点)
ナンチャンは5人でやる意味が薄いと言っていたけれど、そんなことないと思う。舞台縦横の使い方、キャラクターの入り交じり、見ていてドキドキした。漫才っぽくなくてもいいじゃない。パーマみたいになってる、未来から来た人、最高だった。どっちかと言うとコントだから10分あればよかった。


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6:トータルテンボス(81点)
大きく差が開いて6位。変な言葉選びさえなかったらもっとのめり込めた。
6位以下はお金払っても見たいとは全く思えない。


7:麒麟(80点)
今まで見た麒麟で一番面白かった。面白いんだけど、「松本人志の登場を見て、時代が変わった、敵わないと舞台を降りた島田紳助」というエピソードの延長線上にあるM1の性質上絶対1位になれないし、バカみたいに面白いことを言う人たちではないんだから、もう出なくていいとすら思う。出るなら「笑点」とかの方が似合うんじゃないかなあ、悪い意味ではなくて。


7:ライセンス(80点)
普通すぎて感想が浮かんでこない。と言いつつ、M1でなかったら普通に笑ってるかも。


9:変ホ長調(77点)
9位にしてるけれど、びっくりするくらい面白かった。観客の芸能知識に面白さの大部分を依存しているので、どうしても評価が下がる。けどエンタに出てる芸能人いじり、あるあるネタに比べたら数億倍面白い。ただやっぱり色モノ。


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【ファイナル】
1:チュートリアル(97点)
面白い!ブラマヨの吉田といい今回の徳井といい、去年に続き「松本教」の後継者が優勝をさらった感がある。今回に至ってはまさに正統。松本人志が貧乏で吉田がブツブツで岩尾が不細工で、という流れをあれするに徳井はゲイ(ないし性的なアンポピュラリティーを持つ人)だな。
とにかく面白かったー。


2:フットボールアワー(87点)
一本目の方がはるかによかった。ワン・キャラクター押し切りはつらい。
あと、一昨年までに爆発させていた「他者への行き過ぎた劣等感」が消えてしまった気がする。
勝ちに来ているというよりは楽しみに来ているという印象を受けて、優勝経験者の立ち振る舞いとしてそこはすごく好感がもてた。


3:麒麟(79点)
平均的な麒麟。絶対1位にはなれない器をひしひしと感じる。どうあがいても永遠のファイナル3位。M-1グランプリには出ない方が良いと思う。


雑感。
4分しばりのせいでこみ上げるおかしさがほぼ死滅した。
制限時間6分、POISON GIRL BANDチュートリアル笑い飯でファイナルを見たかった。
「私はお笑いに理解があります」アピールのために会場にいる著名人のカットは興ざめも甚だしいので心からいらない。漫才中に出る審査員の顔もいらない。あれは「ここで笑えばいいんですよ」の強要という意味で文字テロップと同じ弊害を生んでいる。
島田洋七は技術があるかどうかしか言わない(言えない)からコメントを聞いていて全然楽しくない。未だに自分はトップクラスに面白いと勘違いしている節があり、かつ寸評として成立する「しゃれたこと」を言う能力皆無。つうか彼のコメントは全体に品がない。
一度見たことのある話(ないしその類型)は、どうしても評価が下がって見えてしまう(僕の場合はチュート・フット・麒麟でそれがあった)。と言いつつ、チュートリアルはやっぱり面白かったし去年のハッピーバスデイ(笑い飯)なんて何度見たか分からないけれど、常に脳みそぶっとぶほど笑えるから、それは関係ないのかもしれない。