元生徒たち

バイト先の去年の生徒たちと飲んだ。みんなしばらく会わない間に大学生やら浪人生らしくなっていて、というよりは高校生っぽさが抜けていてそのくせやっぱり全然変わってなくて。去年の4月から12月末まで、毎週4時間も5時間も多いときはもっともっと顔を合わせていて、講師と生徒って関係ではあるけど今までに100時間以上(高2の頃からの生徒だと200時間以上!)の時間を一緒の空間で過ごしてきたのだ。昔は生徒で今は後輩ってことになるのか、この関係性は何と形容したらいいのか分からないけど、君たちはとっても大切な大切な知り合いだよ、本当に君たちに会えて良かったよ。また今度飲んでくれ、さすがに毎回はおごれないけど。
楽しすぎて楽しすぎて、お酒を一杯飲んでしまって、生徒の終電ギリギリまで色々喋ってしまった。すっごい帰るのを遅くしてしまった。いくら相手はもう大学生だっつっても保護者立場としてこういうのはよくないことだな、反省します。


塾って言うのは毎年新しい生徒と会えるって意味ではとっても嬉しい場所で、でもその生徒達はいつか絶対にいなくなっちゃうし大学生になった彼/彼女たちの前にはキラキラした世界が待ちかまえていて、高校生の頃通ってた塾の先生のことなんか忘れてっちゃうんだと思う。講師だって残念だけど全員の生徒の名前を一生覚えていることはできない。そう、塾ってのは出会いが確実に訪れる反作用として別れを宿命づけられていて、そんなおぼろげな別れの予感が通底する場所で、授業やら質問やらっていう形で僕は生徒達に接している。輝かしい10代の時間を、僕から見ればずいぶんとナイーブでイノセントな笑顔や涙を、生徒に親切なふりをしながら(できてない!?)お裾分けしてもらってる、っていうかかすめ取っている。僕はもうあんな風には笑えないしあんな風には泣けない。


話は急に飛ぶけど、ってまあ僕の中ではひと繋がりなんだけど、援助交際ってあるじゃないですか。そう、中年にさしかかったおじさんが女子高生を買春するってのが典型的イメージのあれです。あれって、女子高生の「身体」自体に価値を見出しているのはもちろんなんだろうけど、それに加えてもう二度と取り戻せないあの頃に対する憧れや神聖視。さらに、そんな「敬虔」とも言える憧憬の裏返しとして、そういう神聖なものを穢してみたいっていう気持ち。そういう成分が買う側の人の精神の中にあるんじゃないだろうか。
僕は女子高生の「身体」に特別高いお金を出す気にはとてもなれないし正直少しも共感できない(女性の体にお金を出す気持ちは分かる)んだけど、僕が絶対に戻れない「あの頃」に触れることができて(触れた気になることができて)、さらに、その「あの頃」に泥を付けるっていう背徳の歓びを得られるってのが目的なんだったら、高い金銭を出す気持ちがすごくよく分かる。
もちろん現実にそういうことをするかどうかは別問題としてだし、バイト先の生徒・元生徒の女の子にそういう欲望を投射するかできるかっていったら絶対無理だ。でも、分かる。人格の無い「通りすがり」のteenager、彼/彼女たちの「輝き」やら「あの頃」やらを台無しにする歓び、台無しにしている自分の中にすくうこれ以上ないくらいに醜い魂をみつめる逆説の歓び、「赤の他人」たちの魂の価値をスポイルすることで快感を得るメカニズムが、僕の中には確実にある。
僕の身の回りの「悲しみや喜びの射程距離」内の人たちの幸福を祈り笑顔を願う気持ちだってもちろんある。そういう人たちの愛すべき魂を傷つける悪意ある出来事や人々を心から嫌悪する(とか言いつつ周りの人を傷つけてばっかりいるのが問題なんだけど、本当に)。でも、その裏返しの気持ち、上に書いたような気持ちってのがいかんともしがたく存在している。


とりとめが無くなっちゃったけど、そういうことを強く考えさせられた夜だった。だからどうしたってことじゃないし、こういうことを書くのは単なる露悪趣味だっていうのもわかるんだけど、やっぱり書き留めておきたかった。
まあもちろん、飲んでるときは楽しすぎてそんなことこれっぽっちも考えてなかったけど!


そうそう、あと1つ。
勘違いの甚だしい子が「せんせーはなんだかんだいっておとなだ」みたいなことを言ったけどとんでもない!書いてて恥ずかしいっつうの!僕なんてまだ第2次性徴も起こってないどころかギャングエイジですが何か!?
これからもちょくちょく会って色んな話をして、早く僕のダメなところばっかりを見られるようになってくださいよ。昔はお世話になったかもしれないけど、何てダメな奴なんだ、って。先生/生徒っていう関係に伴う外面的な尊敬が消えて、僕のダメな所を片っ端から見つけられるようになって、その上で「それでもまあ悪い奴じゃないしつきあってやるか」って考えてくれたらなあと思う。気持ちの上で対等になって、ひょっとしたら僕にもそれなりにいいところがあって、そこを認めてくれるなんてことがあったら、それはめまいがするほどにすばらしいことだと思う。
ものすごく生意気で傲慢な夢だってのは分かってるんだけど、まあ日記の上でくらい夢を見させてください。


今日の日記は暗いしそもそもキモイですね。きっと書いてる人の内面が本質的に暗くてじめじめしてるんでしょうね。ど変態ですね。ああ気持ち悪い!