しあわせのかたち

今日久しぶりにタワーレコードに行って本当に幸せだった。新宿Flagsビル。2階の入り口から入ってエスカレーターを1つ過ぎるたびにちょっぴりドキドキした。
7階のタワレコに着いて、ぶらりぶらりと眺め、触れ、聴きながら1つずつフロアを登る。あれやこれやとCDや雑誌を見て回る。なんて幸せなんだろうか。何を買おうかあれこれ迷ってさあ、1時間も2時間も迷って結局最初から欲しかったやつを買うんだ。ハナレグミのベストとFree Soulのベストコンピ。そしてめっけもんの本田祐也。チンドン meets 現代音楽。もう亡くなってしまった人みたいだけど、こういう出会いがあるからCD屋をぶらつくのってやめられない。


思うんだけど結局僕の人生に必要なのって、愛すべき友達、僕の全てを投げ出しても惜しくないような恋人(彼女でも奥さんでも)、そして僕に新しい世界を見せてくれる代え難い本たち、僕の魂を時にゆさぶり時に癒す美しい音楽の数々。たったこれだけなんだな。4つは要素として多いよ!って声もあるかもしれないけど、この4つは削りたくないし、逆にこの4つがあるんだったら僕の人生は満ち足りすぎていてい怖いほどだ。つまりこの4つが僕の必要十分。
それらを維持するためにはお金も時間も社会的地位も必要なのかもしれないけど、そんなの所詮は道具に過ぎなくて、友達と愚にもつかないことを夜明けまで語り合ったり、彼女と何にもしないで寝そべって日だまりの中あくびが二つ重なったり。休日にゆっくり本を読んで音楽に没頭して。それで僕はこれでもかってくらいに満ち足りる。
で、結局その4つは全部、笑うってことなんだと思う。僕の価値観の根底のは「笑う」っていうたったそれだけだ。面白いことも悲しいことも、ままならない現実もくだらない日々の泡沫も、結局は僕が笑って僕の愛するこの世界が笑う、ただそのために存在してる。


僕の価値観を圧倒的な占有率で変えてしまった人物は恥ずかしながらどう考えても松本人志なんだけど、松本人志が「伝説の教師」っていうドラマに出てて最終回でこんなこと言ってた。
笑うためや。
人は何で生まれてきたんですかって聞かれた時に「笑うためや」ってそう答えてた。
僕が松本人志を信頼しているのはまさにこの受け答えであって、面白いこと大好きな奴ってついついそこで「面白いことをするためだ」って答えちゃうと思うんだ。でも松本は違ってて「笑うためや」だった。僕の勝手な拡大解釈なんだけど、それってつまりは世の中は面白いことばかりじゃない、っていうかむしろ辛く厳しいことだらけだけど、それでも笑っている間だけは幸せになれるじゃないかって。
確かに彼の作る笑いの世界はそういう、最終的な「救い」としての笑いに終始していたように思う。
面白いから笑うんじゃなくて笑うから面白い。そういうメッセージを彼は「ごっつええ感じ」の中で、「一人ごっつ」の中で、そしてその他全ての番組の中で繰り返し繰り返し発信していたた(いる)。だから人のことをバカにするコントをいっぱい作ってたし差別も貧乏も不当な支配も、そんな世の中のろくでもないもの全てを笑い飛ばそうとしていた。意思の力で、必死にあがいて。
Mr.Baterも兄貴もゴレンジャイもキャシー塚本も半漁人もエロい英語の先生も、そして何よりトカゲのおっさんもぜーんぶがそうだった。
松本人志が他のお笑いの人たちに比して「ムダな理屈抜きにとにかく面白い!」に照準したすばらしい作品でありステージを数多く残しているのも厳然たる事実だけど、彼の最大の特徴ってやっぱり「つらい現実を笑い飛ばす」なんだと思う。


そこまで「笑う」に欲望の矛先が当てられていないにしても、せめて「ほほ笑んで」いたい。ざらざらした現実の中で何とか(例え一時のものであったとしても)安らぎであり救いを!この手に!そういうやつ。ふり返ってみると僕の好きなものって全部そういうやつだな。
本とかマンガだったら西原理恵子の「ぼくんち」もモンゴメリの「赤毛のアン」も業田良家の「自虐の詩」も、吉本ばなな町田康舞城王太郎も。音楽だったら渋さ知らズとかSoul Flower Unionとかオザケンとかサニーデイとか。今ぱっと浮かんだのはそのくらいだけど、とにかくそういう気持ちに僕をさせてくれる全ての本であり音楽であり、その他あらゆる人間の営為。そういうのが好きで好きでしょうがないんだな。


友達と恋人と本と音楽。それをとりまく全て。そういった愛すべき、そして僕の暮らすこの世界にとって不可欠なものたちに、上に書いたような「笑い飛ばそうよ」みたいな僕の欲望を投射するのは失礼で下品なことだと思う。人には、本には、音楽には、それぞれの価値観があって、本来は相互に尊重し譲り合わなきゃいけないんだと思う。それを人は倫理と呼ぶ。
それでもしちゃう。すぐに僕の狭くて浅い価値観と判断基準が蠢き出して、その独善的な物差しはすぐさま世界を包摂してしちゃう。それは悲しくてつらくて仕方ないことなんだけど、同時に抗いがたい快楽とこの上ない充足感を僕にもたらしてくれる。きもちくってしょうがない。ああいやだ!


…と、ここまで書いてふと思ったけど、こりもせずほんと毎日同じことばっかり日記に書いてるなあ。日本酒飲みながらつらつら指の進みに身をまかせるとついこうなっちゃうな。いいかげん飽きろよ、こういう事書くの、自分でさすがに呆れてきた。といいつつ楽しくて仕方ないんだな。やっぱオナニー日記って最高ですね。明日から胸外だ。6時起きだ。お休みなさい。