バカの盾

【前書き】
あ、これから、一般的な話に見せかけた(全然見せかけられてないけど)、ものすごくせまーいレンジの話しますね。下の文章であたかも世の中一般のことみたく書かれていることは、僕のささやかな人間関係の、そのまたささやかごく一部から抽象された一種の人格と言いますか表出上の傾向と言いますか、とにかく母数4くらいの小さな小さな話です。
お世辞とか言い訳とか取り繕ってるとかそんなんじゃなくて、少なくともここを読んでいると僕が認識している紳士淑女諸氏におかれましては、全くあてはまらない話でございます。


【こっから】
毅然。きぜん。
毅然としようとしてる人って何だか苦手だ。私、生まれも育ちもキゼンでしてよ!って感じで背筋を伸ばす人って、なんだろな、「負けないように」してる感じがして僕みたいなダメ人間が接するとどうにもこうにも噛み合わないんだな。大体「毅然」っていう、手書きじゃ漢字も書けないような小難しい態度を、人前で平気でとってどうすんだっつうの。
中でも「私バカだけど〜だと思うの」って話をするタイプ人が駄目だ。さっきからセリフが女性の口調になってて、これって僕の勝手で下品な思いこみなのかもしれないけど、そういう人って女の人に多い気がする(もちろん女の人の多くがそうなんじゃなくて、そういう人の中には女の人の方が多いんじゃないかってことね)。
話を戻すと「私バカだけど〜だと思うの」の人って、まず自分が土俵から降りておいて、その上で他のことを否定したりするでしょ。人のことを批判するときの最低限のルールって、その土俵に自分も乗っかるか、あるいは論理的に止揚され得るメタレベルの土俵を提示することだと思うんだけど、そのどっちでもなく、ただ「私バカだから」って一言で勝手に土俵から降りて枡席であぐら書いて幕の内弁当食いながら言いたい放題。行事でも無いのに物言いつけ放題。もちろん座布団飛ばし放題。なんじゃそりゃあと。


この前の金曜日に本当に聞いたセリフなんだけど。
「私ってバカだから自分のことを上手く使ってくれる人が上司にいた方がいいと思うんだけど、私の直属の上司って○○大学で、○○大学の人って結局そういう頭の良さが中途半端っていうの?気配りっていうか、適切な指示ができない人なのね。だからどうしてもその人と反りって言うか相性が合わなくて仕事がとてもストレスになってるの」
っておい!まあ適当に頷いといたけど、何じゃそりゃあと。自分バカだからー。ペコリー(ゴリエ)。とか言っとけば全部相手のせいにできるとでも言いたいのでしょうか。
多分その人は(ちらっと会っただけなのに勝手なこと言いまくってるこっちが悪いんだけど)すごくいい所のお嬢様で、「自分」ってものをしっかり持つことを常に考えてて、いつだって背筋をきちんと延ばして生きている人だ。
今までも何人かそういうタイプの人に会う機会があった。そういう人たちって共通して「私って結局バカなんだけど、女性としての幸せとをきちんと考えてて、仕事だって持って自立してるし、自分の意見だって拙いなりにしっかり言えるわ」って匂いをプンプン出してる。おいおい、実家に住んでお金も納めないでしかも親に洋服買ってもらってんじゃん!あなたの言う「女性としての幸せ」ってつまりは、きちんと働く親と同じかそれ以上の生活水準を提供してくれる男性と結婚して、その男性への依存/被支配の構造には無自覚なままに家庭に入るってことじゃん。で、これは自分の意見です、ファンデーションは使ってません!とか言いながら、ちょっと小難しそうに見せかけたファッション誌の自己実現コーナーの一節だとか小さい頃から刷り込まれてきた両親の言葉とかを長い年月をかけて内面化して、あたかも自分の考えのように喋ってるだけじゃん(まあ、これって今ここに僕が書いてることも含めてあらゆる言語活動がそうだけど)。丁寧に見せかけた、ものすごく慇懃無礼で傲慢な言葉遣いが多いのも彼女たち「セレブリティー」の特徴。で、恥ずかしくない自分のために、頑強なだけででもろい自己が傷つかないように「毅然とした私」を演じて、いつしか演じていることを自分でも忘れて今日も日は暮れていくと。あはは。いや、家庭に入る女性が悪いとか言ってるんじゃないですよ。家庭に入る覚悟ってすごいと思うし、それとこれとは全然話は違いますよ。
まあとにかく、どうぞどうぞ。ちょっとはずした感じがキッチュでカジュアルな、雰囲気のいい代官山のイタリアンとか行ってネイルアートの話でもしながらシェフの気まぐれパスタでも食べててくださいな(超偏見)。ボーノ!ボーノ!タイガーマスクタイガーマスク


ずいぶん悪く書いてきたけど、上に書いてきたことって、コンプレクスとかルサンチマンって言うんですか?僕のそういうのをそのお嬢様たちに投影して、「どうせ俺は庶民だし自己実現とかよくわかんない人間だし、安い焼酎が好きだし、正直言ってこの人たちとは生きるランクが3つくらい違うから」とか考えた上での理屈だ。つまりは僕も「俺って下の人間だけど〜だと思う」って、同じことをやっちゃってるってことで、本当は人のことなんて言う資格ないんだな。
男の方からの、一方的で、ちょっとひねって考えれば男尊女卑も甚だしいようなことを言ってる。偉そうなこと書いてるけど、人様の内面を勝手に言語化して否定的なコメントしてる。そんな僕の心のあり方の方がよっぽど品が無いしひねくれてるのは確かだ。にしても何か違うだろ!と思わずにはいられない。感覚が合わないってこういうことを言うんでしょうかね。違いますかね。
とにかく、苦手なタイプの人が世の中にはいるなあって話でした。