駒場・渋谷・調布・フィル

昨日のことと今日のことを、昨日のこと、今日のこと、そんな順番で書こうと思います。
フィルの話です。


昨日は解禁日。ってことで、東経135度に赦された特権的な祝祭を享受せずして何が日出る国の民かってことで、日本人の一般意志たる「ご多分」にもれず、ボジョレー会をたしなんだ。所は駒場キャンパス学生会館。小汚いあの部屋も008らの尽力によりこぎれいに整えられ、初々しいヴァンルージュに相応しい装いに、照れくさそうに身を包んでいたようないなかったような。
別にボジョレー何とかにこれといった思い入れは無いし、何とかヌーボー飲んで今年のワインの出来不出来がどうこうとか言える程の経験も舌も持ちあわせていないけど、色々飲み比べた今年のニューフェイス達はそれぞれに味が違って面白い。
非常に和やかに会は進行し、バッカスの神に奉仕する僕たちは心地よい酔いに身をまかせながらも決して享楽的なムードに陥ることはなく。笑顔と笑いの絶えないあっと言う間の2時間だった。


はずなのに、ワインが切れたからってウィスキーだのバーボンだのアセトンだのを持ち出した人がいたのは非常に遺憾だ。今日はうら若きヴァンの門出を祝いほのかな酔いに忠誠を誓う日でしょ?フィル一番の識者たるべき指揮者がいきなり「shoshoshosho、お前のグラスに入ってるそれ、ウーロン茶だろ」って言ったときには唖然呆然。どっからどう見てもこれはウィスキーだろ!そんなこと言われたら喜んで飲んじゃうだろ!


何だか勢いがついたサークルのごんたくれたち10人強で渋谷に移動し、HUBで飲む。ビールばっかり。繰り返すが今日はボジョーレー・ヌーボーの解禁日であってワイン飲まなきゃいけないんだけど誰も気にしてないんだ不思議だ。ここじゃ書けないこととかも喋りつつ、いやー飲んだ飲んだ。
トルコ帰りのタコは、かの国で「繊維が天然か合成かは燃やしてみればわかる」ってことを学んできたらしくてそのことを周りのみんなにやさしく教えてくれた。そして姉さん、事件です!かなり飲んでてはっきりは覚えていないんだけど、四隅のぼんやりした記憶の風景で、明らかに僕のマフラーが燃えてた。燃えたってっても端っこの、ヒモがぴらぴらしてる部分だからパッと見全然分からない。でも明らかに焼けた跡が残ってる。後になって伝え聞く話によると酔った竹さんが僕のマフラー巻いてて、おもむろにマフラーの端っこつまんだ008だかタコだかが火をつけてみたらしい。しかもそれを促したのは信じがたいことに、他ならぬ、そのー、僕らしい。火を見ながら「燃えるのも仕方ない、いや、むしろ燃やされていきたい」とか言ってたんだって。わからない。原因も理屈もわからない。風邪が拭けば桶屋が儲かるってことわざがありますわな。でもボジョレーが解禁されればマフラーが燃えるってことわざは無いでしょうよ。世界よ、もうちょっと信頼のおける因果律で世の中を動かしてもいいんじゃないのかい?
うーむ、マフラーには申し訳ないがこんな楽しいHUBは久しぶりだ!


その後指揮者の通いのバー(つまりKen's Bar)で3次会して、しこたま酔った僕はもうあれですわ、語りモードですわ。酔って語ってる時の自分ほどふり返って恥ずかしいものはないな。喋ってることに理屈もウィットも何もない上に、発話者の生き写しで内容が空虚だからな。しかも何喋ったかあんまり覚えてないし。まあ、いただいたウィスキー、なかなか美味かったな。しつこいけど、今日はボジョレーの…(ry
で、そこで喋りたい放題喋って、4次会はいつもの通り寝てた。始まった二日酔いに頭を抱え、打ち寄せる早朝の寒さに震えながら帰路についた。occa-mottoに竹さん、帰り道の面倒見てもらってすみませんでした。
とにかく、端から端まで死ぬほど楽しい解禁日だった。


で、こっから今日の話。
前日のダメージ抜けやらぬ中、這々の体で教授試問を終わらせて今日はバイト先の人たちと飲む。
場所は珍しく調布。「NANA」に出てくることで有名らしい「Jackson Hole」ってとこで飲んだ。NANA大好き!ナナに憧れるけどやっぱハチに共感しちゃうの〜。みたいな、隙あらばNANAのキャラクターと自分をidentify withしようと虎視眈々なお客さんで店はごった返してた。大体NANA7巻までしか読んでない僕は明らかに浮いてましたね。
でも、店の内装も店員さんもいい具合に適当で雰囲気がよくて、すごく素敵なお店だった。


さてさていざ二次会。行ったのは「気らく屋」ってところで、まあそこであれやこれや話した内容も極めて興味深かったものの、何よりそう、この店は4年前と3年前、僕がまだ1年生2年生だった時のフィル室内楽大会で打ち上げやったとこなんすよ!あまりに懐かしくて、まあそんなことはおくびにもださないながらに思い出し泣き笑いしちゃいそうだった。
1年生の時、昨日飲んだフィルのメンバーは一人もフィルにいなかった。でもすばらしい先輩がいっぱいいて、わけわかんなくなるまでバカみたいに酒を飲んでたのは間違いない。氷の口移しとかしてたな。アホだ。2年生の時は、昨日飲んだフィルのメンバーが何人かいたな。僕は団長とかいう分不相応なポジションにいて、そんでやっぱり間違いなく、バカみたいに酒を飲んでた。コンマスE戸さんとかtsussyとかと一緒にゴマ油を一気したのもここだったっけか。アホだ。


うーん、懐かしかったなあ。「気らく屋」で後輩気分で気楽に飲んでたあの時の僕はもういなくって、色々なことを少しは考えるようになったし、困ったことに、気が付けばサークルのずいぶんな古株になっちゃった。年が変われば時期が変わればフィルのメンバーは違う。あの頃一緒にバカ騒ぎしてたメンバーは、今でもちゃんと会えるにしてもほとんどフィルには残っていなくて、だから、あの頃と同じ味の酒はもう飲めない。最高の仲間達に囲まれたあの瞬間の、あの一気飲み。それはもう二度と戻ってこない。
トイレに行ったついでにちょっとのぞいてみた。吐くまで飲んだあの大きな部屋。そこでは僕の知らない誰かたちが僕の知らない誰かたちと嬉しそうに楽しそうにお酒を飲んでいて、僕は1年生2年生の頃がごっちゃになった無邪気な思い出を、想起される景色の断片を、その人たちの笑顔に投影しながら何だか少し寂しかった。楽しい思い出しかないのに、何でだか僕は寂しかった。


4年前のメンバー、3年前のメンバーは最高だ。もちろん、平日にもかかわらず死ぬほど飲んでた昨日のメンバー達も最高だ。4年前の「気らく屋」メンバーと昨日のボジョレーメンバーは、見事なまでに一人もかぶってなくて、どうやら時代はやっぱり動く。回る。僕はいつの間にか年寄り組になって立場も考え方も変わっちゃったからあの時のお酒を酔うことは二度とできないけど、その喪失はますますあの日の思い出を輝かせるけど、フィルの人間達はいつだって変わらず(大きく変わったけど、やっぱり変わってないんだ)すばらしく、あの時にはやれなかったやり方で昨日も今日もお酒を酔える。そうそう、セクハラしたり後輩いびったりしながらね。っておい!
フィルで今まで数え切れないくらいたくさんお酒を飲んできて、これからもあと何回かはフィルのみんなでお酒を飲める。次に乗るかどうかはわからないけど、間違いなく残りは少ない。期限が近づいている。そして、どうやら最後まで素晴らしい人々に囲まれてお酒を飲み続けられそうだ。最初から最後まで、奇跡のように最高のメンバーと酔い続けられる。何てことだ。何て幸せなんだ。ありがとう、フィルを介して知り合えた多くの人たち。


よしよし、こんだけ誉めておけばまた酔いつぶれても許してもらえるだろう。明らかに常に最も迷惑かけてるからなあ。次の宴は駒場祭後か。全力で酔うためにバイオリンの練習をちゃんとしなくてはならない事実に、二日酔いより頭が痛い!