Won’t you please send me back in your heart?

ミュージックマシーンの一番上の一言メモ欄にタクヤさんが書いてたコメント。

「I want you back」がフェイドアウトしないでずっと流れ続ければいいのに。


至言!
マイケルが叫び続ける"I want you back"のきらめきと喪失感、それが永遠に続いたら最高なのに。終わりがあるに決まってるからこそきらめくんだし喪失を感じるわけだから、原理上それは不可能なんだけど、それでもフェイドアウトしないで「I want you back」が流れ続けることを夢見ないわけにはいかない!
ま、とにかくこの曲、無条件で大好き!


全然関係ないけど、幼い恋を歌ったこの奇跡の名曲を聞く度に"I want you back"の「I」も「you」も結局はマイケル自身に思えてしかたない。小さい頃、死ぬほど過酷なトレーニングの果てに歌うマイケルは、そりゃもちろん天才中の天才だから、将来の自分の姿が見えちゃってたんじゃないかと思う。在りし日のイノセンス(そんなものは初めからなかったのかもしれないけど)を失いネバーランドで子供たちと共に暮らす大人のマイケル。ちょっぴりどころかめちゃくちゃ肌の白くなったマイケル。そんな大人のマイケルを「you」と呼び、「I want you back」を叫び続ける幼少のマイケル(つまり「I」)。巨万の富を得る代償に切り売りしてしまったあれやこれや。取り返しがつかないことの分かり切った、圧倒的かつ不可避な喪失の予感が「I want you back」を逆説的にこれでもかってくらいにきらめかせてる。


そんなマイケルの気持ちを知ってか知らずか、楽曲はこれでもかってくらいにきらびやかで(でもちょっぴりセンチメンタルで)、つまりまさにきらめきと喪失の予感で満ちている。戻って来いよ!戻って来いよ!そんなの不可能ってわかってるけど叫ぶ。フェイドアウト直前あたりからのマイケルのシャウトは本当に鬼気迫るものがあって、気が狂ったみたいに幸福で美しくてチアーな音楽の中、完全にバランスを逸しちゃってる。明らかに浮いてる。夢の音楽の中で一人孤独に来たるべき現実を見据えてるから、浮いてる。
そのあたりにさしかかると、僕は胸をかきむしられる思いがしてしょうがない。


ここからは蛇足のさらに蛇足だけど、大人になったマイケルは、その「子供マイケル」からの時を超えたメッセージに突き動かされて、無邪気に笑っていられた遠い遠い(それこそデビューのはるか前の?)あの頃に思いをはせるんだきっと。イノセンスへの過剰な信仰、決して取り戻せないきらめきの時期。それを、あらゆる犠牲の果てに勝ち得た巨万の富と名声で現実のものにしちゃったのがネバーランドであり、本当かどうか知らないけどペドフィリアという性癖なんじゃないか。
そしてやっぱり「I want you back」って叫ぶ。大人になっちゃった俺だけど、小さくて無邪気で輝いていた頃のお前に戻ってきてほしいんだって。するとどうだ、Iとyouは大人と子供で互いに錯綜して、共犯してるってことじゃないか。小さなマイケルは大人になった自分に、大人のマイケルはありし日の自分に。過去から未来に、未来から過去に戻ってこい、戻ってこい!互いに「I want you back」って叫び続ける。
イノセンス」っていうどこにでもあったはずで、実はどこにもあるはずのない虚焦点の周りを、ちっちゃくて黒いマイケルとおっきくて白いマイケルがぐるぐる回ってるイメージ。そこにあるのはポップソングの奇跡。


まあ、でっちあげのくだらないストーリーだけど、「I want you back」を聞く度にそんなことが頭に浮かんでくる。そして、マイケルとはスケールが違いすぎるけど僕が不可逆的に失ってきた可能性やイノセンス(つまり不可逆的に獲得してきた現在の状況)についてあれやこれや考え、たまらなくなる。だからますます、この曲が好きになる。


あーくだらない話だ。