後悔の後先

メーリングリストに殺されそうになった。


あれはそう、あの暑かった夏のことだ。夜の熱気と甲子園に見た感動、そして僅かのアルコールに勢いづいた私は携帯メールの投稿者名を「ハンカチ王子 ○○(←名字)」としてしまったのであった。若気の至り、いや、若気の至れり尽くせりとはまさにこのことだ。
ひどい、これはひどい。正視に耐えない。まだ日本全体が「ハンカチ」「王子」という言葉に対し無条件に寛容であったからこそ許されたものの、様々な意味で酔いの醒めた今このような愚行を改めて眺めるに、そう感じざるを得ない。


この「投稿者名」なるシステム、日頃自分で携帯電話を用いている分には決して目に触れぬ部分であるからしてつい意識の外に追い出されがちだ。街を染め変える秋の気配があの夏の興奮をチルしアウトするにつれ、この「ハンカチ某」なる日本語の難破船のような投稿者名は徐々に私の記憶の表舞台から姿を消したのであった。


それがどうしたことだろう、本日の試験(皮膚科・形成外科)を終えふと携帯電話のメーリングリストを使った瞬間、携帯電話に眠るその悲劇が急に思い出されたのだ。ハ、ハンカチ王子って…。
夏は魔物、気持ちは浮つく。幾度となくBOYS BE...で学んで来た内容を身をもって体験した瞬間である。フラッシュバックのその瞬間の、やるせない気持ち、行き場ない恥ずかしさ、渚のバルコニー。あとついでだから勝手にシンドバッド。本当に死ぬかと思った。思わず髪の毛を掻きむしり、気がつけば携帯電話を叩き割ってハンカチに代え汗を拭いていたほどだ。ハンカチW41Sだ。
いつも行ってる皮膚科の先生に相談させてもらうわ。ブラックマヨネーズではないが心からそう思った。メーリングリストに殺されそうになった。