vomit

ひさしぶりに胃液を吐いた。事態は混迷をきわめているのだが、ざっくりと言えば原因は串とノルウェー立川流にある。


新宿は西口における最高の居酒屋、すなわち串特急でもりだくさんの揚げ物に舌鼓をうっていた私はそろそろ場も切り上がろうかという場面でトイレへ向かった。久方ぶりのアニキ串特急、会の途中に鳴らされたシャチョウからの電話など代々木についての浅からぬ因縁を感じつつ、美味なるビールにいざなわれ今日も尿道の通りは快調だ。するとそこにいるではないか超絶美形のノルウェー人が。今まで見てきたあらゆる人間の中でルックス面における圧倒的な極点がノルウェー人の形をして目の前にある。いやもちろん見ただけでスカンジナビアを感じさせる風貌(ヴァイキングの格好など)をしていたわけではないが、同じテーブルにつき話を聞くにどうやら彼はノルウェーからやってきたモデルさんらしい。なおこのあたりで日付は15日の顔をのぞかせ、アニキはTaylor先生と共に帰宅、私ひとりがエトランジェとしてノルウェー机の5人に加わっている。


若さにまかせた勢いあふれるアルコール摂取に陥落しタクシーにたたき込まれたノルウェー人と別れたのは午前4時頃だっただろうか。彼は19歳だった。それが人生で一番美しい年齢だなどとは誰にも言わせない豪快なつぶれ方を見せていた。道ばたに倒れ込んでも依然として美形は美形だ。


夜明けを待つ新宿に残された3人、すなわち私、その日も朝から仕事のおっさん、40代のおねえちゃんは始発まで寒をしのぐ、なる名目でさらなる居酒屋を目指す。聞くところによるとおっさんはムラサキスポーツでかなりのポジションにありながら立川流噺家でもあるという。一次会でアニキ、二次会ノルウェーに続き三次会で立川流!「仕事もあるんでアタシはゆざましをいただきます」と言いながらワイン、このあたりが洒落ている。かっこいい。新宿はなんと出会いに満ちていることか。
落語についての含蓄あるお話(本当におどろくほど話が上手い)をうかがいながら、立川流も件のノルウェー人とは何の知り合いでもなく「かっこいいから声をかけた」だけと判明。だってさっき親しげに話してたじゃないですか!酔ってたら仲良く見えますよぅ。ノルウェー亡きいま何のゆかりもない人間たちの朝5時だ。一晩で見知らぬ人間2人に声をかけられた挙げ句の果てに自分は先にリタイア。美形の求心力、まことおそるべしである。


太陽が十分に顔を出したころ帰宅、昼に起き出しひさしぶりに胃液を吐いた。透明な胃液はノルウェーの海よりもきらめき立川流の噺よりも酸味が効いていた。んなわけない。