hot love, cold city

キャミソールが見たい。暦の上ではもう夏も終わるというのに。私は未だ2007年のキャミソールを知らない。
治安は良くても華のない街、23区業界における「鉄の処女」として名高い文京区本郷でもキャミソールは散見された。iPodを片手に街を歩けば、赤門を通り過ぎキャンパスを文系方面まで逍遙すればそこにキャミソールはあった。目もくらまんばかりに光を発するその姿、8月の太陽はぎらぎらとかがやき私たちを白く焦がし、照らされたキャミソールは空を灼熱の色で染めあげていた。あれこそはまさしく夏だった。


何がすばらしいかと言えば腕が出ており肩がのぞき脇まで見え、その上で胸までもが強調されるのだからキャミソール、それは夏を彩る最強の衣装と言える。胸騒ぎに満ちた台風の予感でもリンと鳴る風鈴の音色でもなく、夏の訪れを告げていたのはいつだってキャミソールだったのかもしれない。
ところがどうだろう、病院にこもってばかりの8月は私とキャミソールとの邂逅を決して許さない。おっキャミソール!と色めきだったとして、結果目の前にあるのはタキソールやらテガダームやらキャミソールとは音以外似ても似つかぬものばかり。紛らわしいことこの上ない。気は滅入るばかりだ。

http://www.asahi.com/international/update/0807/TKY200708070048.html
カーキ色の制服にピンクのキティちゃん――。タイ国家警察防犯部は8月から、規律に違反した警察官に、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」のワッペンをつけたピンクの腕章を着用させる「処分」を導入した。違反警官はこれを着けて警察内を巡回しなければならず、幹部らは「恥ずかしさが軽挙妄動をおさえるだろう」と期待している。(8/7 asahi.comより)


この記事についてコメントをしなさい。そんな要望が右手のメール欄から寄せられたのだが申し訳ない。今の私はそんなリクエストへのうのうと応えていられるほど悠長な心もちでいられないのだ。残暑の季節にあって未だ巡り会わぬキャミソールへの思いに胸を痛める我が身、どうしてタイでキティがどうしたこうしたに気持ちを向けられよう。No camisole No life 、この言葉に秘められた真実と真理の重みはどこへ向かうのだろう。タイの警察官さんお願いだ、軽挙妄動に走っていただきたい。キャミソールを着ていない不届きな20代女性をかたっぱしから逮捕してはいただけないだろうか。10代後半の女性も同様だ。


もういい。ヘマをしたタイ人警官でいいからキャミソールを着ればいい。海の向こうでキャミソールを着ている人が少しでも多くいる、そう想像するだけで私の心には平穏とやすらぎが訪れる。海が見たい。恋がしたい。あなたがほしい。タイに行きたい。キャミソールが見たい。浴衣も見たい。