トロント

少し間が空いてしまったがカナダから帰国した。学会の「が」の字も知らない私がきなりトロントで「アメリカ胸部学会(American Thoracic Society)」とかいう、いかついことこの上ない場所へ出向くという、これは私の中ではある意味ウルルンばりのイベントで、なんと言えば良いのかな、初めての男(ひと)は熱い胸板が自慢のカナダ人でした…的な、彼の国の男性は昂ぶると本当にアイムカミンッ…!ってうめいてました的な、非常に思い出深い経験になった。
簡単に学会の内容を振り返っておこうと思う。以下全て現地時間。

[16日]

夕方にトロント着。スズキ氏というガイドさん(日系人?)が空港からホテルまでの40分程度の間わずかの切れ間も無くひたすら喋り続け、過剰な上に現実の行動に一切反映されぬ類の邪魔くさい気遣いも手伝ってものすごくうざい。スズキ酔いという経験はこれが初めてだ。さすが移民の街トロント、私の脳髄に洗礼としてのカルチャーショック(=スズキのうざさ)を早速刻み込んでくる。
チェックインを済ませオイスターバーでものすごく酔っぱらう。翌日からは本格的に学会に参加する。朝も早い。しっかり眠る。



空港に着くと看板が。それなりの規模のイベントらしく、後述するカバンを持ったATS参加者が街中に溢れかえっていた。スーツ来て2人以上で歩いているのはだいたい日本人。


[17日]

ATS(アメリカ 滝 ソサエティ)へ参加するために一路ナイアガラへ向かう。トロントからバスで1時間半程度。いや観光ではなくてあくまでこれも学会だから。
ナイアガラはすごい。遠巻きに見えてきた滝は「何だかそんなに高低差ないね〜」くらいのものだったけれど、近づくとこの迫力はちょっと他にナイアガラ。学会の緊迫感がひしひし伝わってくるようだ。滝の裏をのぞいたり、船で滝つぼまで繰り出してもらったりと観光、ではなくて遊学を満喫。
トロントに戻りタイ料理屋でビールなどを飲む。次の日こそは学会会場に行こう。



トロントのホームレスは道ばたでこの状態で寝るっぽい。5月でも夜の外気温は5度以下。地下道から温風の吹き上げる金網の上に陣取って眠り、おかげで凍えないという寸法。実際にごろんと寝転がってみるとコレが実に温かい!金属は熱されすぎて地肌では火傷してしまいそうなくらい。トロントに行ったらみなさんぜひお試しを!



ナイアガラすごい。ほんとすごいのよ。動画で撮ればよかったわ。


[18日]

トロント3日目にしてようやくATS meetingの会場に足を踏み入れる。ださいとしか言いようのない印刷のほどこされたカバンやら、タウンページみたいな要録やらをレジストレーションと共に頂戴する。これらは後に、邪魔くさい上にひたすら重くかつお土産のスペースを圧迫するという理由でチェックアウトに際しホテルに放置される。アディオス。友よ、短い付き合いだったが忘れないぜ。


午前は小児の気管支拡張症についての発表をなんとなく聞く。パワポのスライドがないと何言ってるかさっぱりわかりませーん。誰かが「ダイニンがうんたらかんたら」と宣っており、そう言えば五月祭(出身大学の学園祭)で友人達が出店する屋台の名前も「ダイニンぐキネシン」だなあなどと思いながら、卒業してもなお遠方から聞こえ来る H川研 の呪詛を身に染みて感じる。
午後は睡眠障害についての概論を含めた症例提示レクチャー。超面白い。やっぱ不眠とかそういうのってサイキックな面も大きくていいよなあと思う。


昼飯はマクドナルドに挑戦してみた。今話題のアンガスバーガー!みたいなふれこみだったので食べてみるけれど、まあ普通のマックですね。税金とかかかって、普通のバリューセットのくせに1000円近くした。夜はいつものごとく学会参加メンバーで、今日はケベック風フランス料理を食べる。ビールもワインも飲む。ケベックすてき!トロントオンタリオ州なんだけれどね。



ホテルの窓から見えたCNタワー


[19日]

何が不満ってオンタリオ州は公衆の場でアルコールは厳禁とのこと、州政府公認のリカーストアか飲み屋さんでしかお酒が飲めない。こっちは観光、じゃなくて学会来てるんだぞ!昼から酒を飲ませろ!と鼻息も自然と荒くなるが、法の壁は険しくどうにもこうにも飲酒が難しい。しかも税金ばかりが加算され全般的にやたらと物価が高い。この国、この州にはぜったい住めない…。
と思いながら昼休みを利用し学会会場からほど近いトロント大学や博物館のあたり(徒歩でたったの45分くらいだよ、エヘヘ)を大幅に昼休みを延長しながら(7時間くらい延長しました)ぶらぶらしていると、街の学生用食堂とお酒の飲めるパブの相の子といった佇まいの、日本で言ったら「バンビ*1」的立ち位置のお店に出会う。ここはバンビと違ってご飯も美味しくかつビールも安く、カナダに来てようやく心のよりどころを見つけた気分になる。


学会も昼休みまではそこそこ聞いた。経済・製薬工業と医療の付き合い方をテーマにしたセッションで「あなたがお薬屋さんからもらっているボールペンは、患者のサイフから費用が出ているのです」みたいな話があった。考えたら当たり前だけれど実際に聞くと驚いた。今回のカナダ行きのきっかけになった、ある先生のポスター発表もこの日にあり。無事に終了されたもよう。先生、ありがとうございました。



オンタリオ湖。なぜか黄色いパラソル。


[20日]

今日も朝早くホテルを発ち学会会場、と同じ通りにあるマーケットへ。どの国でも市場は活気があって良いですね。
もう帰国の日か、あっという間だなあ。CNタワー(世界一高いタワー)にのぼれなかったのは残念だったけど1時間待ちって言われちゃったからしょうがないな。とチェックインを済ませカバンとパンフを放り捨てながら感慨に浸っていると聞こえてくるのはスズキの声。行くもスズキ、帰るもスズキのトロント紀行、空港へ向かう車内で開口一番「CNタワーにのぼっていないなんてトロントに来ていないようなものですからねー、アハハ」と胸元をぐさりとやられる。スズキ酔いアゲイン。そして帰国。


シェラトンホテルの朝食を食べる機会が3度あった。おそろしいほどに同じメニューが毎日供されていた。しかも美味しくない。私はバカ舌で大抵のものは美味しいと感じられる幸福な味覚の持ち主なのだけれど、ここのホテルの朝飯は間違いなく不味い、間違いなく和民の方が美味い。しかも毎日ひたすら同じメニューの居並ぶビュッフェスタイル。そこそこのランクのホテルのはずなのだが、何なのだろうかこの工夫のなさは。どうせ昼に牛を丸々1頭くらい食べるんだからいいじゃん、朝食に工夫とかしてたら胸毛の手入れする時間ないじゃん!とかそういうことなのかしら。おそるべし、欧米文化圏のホテルの朝食。やはりこの国には住めないかも…。


とまあ、ホテルのご飯に文句を垂れつつも、とにかく最高の4泊6日。オンタリオ湖はきらきらときらめいてそれはすてきな佇まいだった。



最後に、ATS meetingにちゃんと行ったんだぞアピール。

*1:赤門近くの洋食屋