ブレンド

やっぱサービス精神だろうと。雨が降ろうとコーラフロートどんな時もメンタリティ・オブ・奉仕を忘れてはならない。それすなわち世の摂理、ネイチャー・ロウ。ローラフロート(意味不明)。
リリー・フランキー「東京タワー」のドラマ化を記念しオカンへの敬意を込めドトールにて産婦人科の勉学に勤しんでいた私だが、何やらレジの方が騒がしい。一体全体どうしたことかと耳をそばだてるに年の頃五十代半ば、ねずみ色のスラックスに焦げ茶のフリースを合わせた銀髪のおっさんがブレンドを一つ所望しており、たかがコーヒー一杯に何をそんなに!と言うほどにレジさん相手にしゃべり倒しているではないか。


お砂糖とミルクはお付けしますか?いやー砂糖ほしいのはやまやまなんだけどさあ、この前ほら、あれ、人間ドッグ?あれ行ってきたんだけどもうね、医者の先生に糖尿の気があるから当分は控えろって。参ったねこりゃアハハ糖尿だってさ。いつもだったら砂糖3つは欲しいところなんだけどねえ、ヘヘ、困ったもんだよホント。ミルクもつけたいんだけどやっぱ、ほら、あれでしょ、脂肪分とかあるでしょ?だからミルクもやめとくよ。あ、砂糖もいらないからね。わざわざ聞いてもらったのに悪いねお姉ちゃん。エヘヘ。最近何だか食べ物の楽しみが減っちゃってさあ。このケーキも美味しそうだから食べたいんだけどねえ。うん美味しそうだねえ残念だよエヘヘ。店員さん、苦笑い。(実話)


これぞ「一方的」の定義!と言うに相応しい、堂々たるいぶし銀のリップサービスぶりだ。すばらしい。店員さんへ敬意の念のかけらも抱かず、さも当然かのように横柄かつ邪険な振る舞いを繰り返すふざけた客の多い昨今にあってこの怒濤のサービス精神。聞いてもいない糖尿病(疑い)を軽々とカミングアウト。オカンとボクと、時々、尿糖。これぞ真のサービス精神と言えるのではなかろうか。


今後は僕もより積極的に、店員さんに話しかけていこう。甘い言葉(尿糖とか)を囁いていこう。そう固く誓う昼下がりだった。人生の師はドトールにいた、そして、糖尿気味だった。フツーにだめー。