ゆったりと道を歩く

歩くスピードが速くなりすぎていた。日々いち早くドトールを目指しすぎていた。ちゃっちゃと。ちゃっちゃと移動してしまおうという心性、得られる利益も大きいが失うものもそれと相関して大きい。歩き慣れた本郷通りもゆっくりと進めばいつもと違った風景が見えてくる。



まゆ毛カット、もしそれをウリにしたいのだとしてこの奇抜なヘアー・スタイルはいかがなものだろう。私などの若輩はもちろんのこと画像一発問題(レントゲンや顕微鏡の画像だけで病気をあてる問題)に熟練した同級生たちであっても、髪にしか目が行かないことは確実だろう。もしこのポスターを見て「あ、まゆ毛のきれいさがポイントだな」と思う人が果たして存在するだろうか。あろうことかポスターの下段には「まゆ毛カラー」の文字が躍る。これもやはり髪の毛に気をとられ、地毛の色にしか見えない。木を隠すなら森、まゆ毛を隠すなら髪。実に思い切ったことをする床屋だ。ああ、なぜマスターはまゆ毛をカモフラージュしてしまったのか。
このヘアーは、校則が厳しいのでせめてまゆ毛をいじってみる、少しドキドキしながら茶髪にしてみる、茶や金などのオーソドックスな色味では飽き足らなくなる、普通の髪型に個性を見いだせなくなる、というオシャレにまつわる一連のステップアップ図式の最終形態にある。断言しても良いがこの先に残されているのは弁髪か丸坊主だけだ。むしろこの髪型でまゆ毛を手入れしていなかったらそれは嘘だろう。


このポスターを4年間見逃し続けていたことが信じられない(昨日貼られたものかもしれないが)。また、ポスターの赤髪氏が私と微妙に似ていることも気にかかる。親族でないことを心から祈る。
教訓。道はゆったりと歩くに限る。