4日目

月曜日の夜行バスに乗り新宿着、そのまま勤務とあいなった私(そういう人多いんだろうな)に、職場の多くの方々が「何でそんなに日焼けしたの?」と声をかけてくださる。指導医にいたってはステロイド軟膏を処方してくださる(実話)。自分でもうすうす感づいてはいたが、この鼻先から麓、裾野にかけての痛みは日焼けというレベルを通り越し熱傷の域に達している線で間違いなさそうだ。鼻周りと目の下が燃えさかる赤に色づいている。


マントヒヒ、季節はずれのトナカイ、『火の鳥』の我王、アフリカの収穫祭のメイク、と鼻先の熱傷を様々に揶揄されながら「けっきょくそんなにどこで焼いたの??」という質問が幾度となく寄せられる。苗場に行ってきましたー。
日本人の遺伝子にすり込まれた苗場→スキー場→冬→ユーミン→ブリザードリザードという思考回路の根深さはここで高らかに発揮され、みな一様に「え、夏なのに苗場??」「しかも日焼け??」と説明はますます面倒な方向へ向かっていくのだが、そこで「フジロックフェスティバル」などと言おうものなら。その先に待つのはただ、泥沼。


そのロックフェスティバルっていったい何をやるの?という質問ならまだ答えようもあるが、一番返答に窮するのが「あ、それ聞いたことある〜。たとえば誰とか出るんですかぁ?」といった類の質問。ええと、 THE CUREとかイギーポップ、ケミカルブラザーズにMUSE、日本からだとベンジーとかボアダムズなんて出ますよ。…訪れる沈黙は何より雄弁に「そんなアゴの割れたやつのことなんて知らねえよ」と語る。いやいやアゴ割れてるって分かっているならMUSE知ってるじゃん。とまれ出演者を説明してもサンボマスタースカパラがギリギリ(確率4割くらい)で通じるかといったところだ。私もミュージシャン情報には全く詳しくないので下手なことは言えないが、やはり共通言語がないと説明が説明にならない。


もう一つのやっかいなのが多少年輩の方々からの「矢沢永吉とかサザンですか?」そして20代半ばあたりの「B'zとかケツメって出ますか?」で、このあたりミュージシャンの位置づけとフジロックに出る人のポジショニングはどちらが偉い偉くないではなく随分と異なるのだけれど、では一体どう違っているのかを説明するのが極めて難しい。違うとしか言いようがなく、どう考えてもB'zは苗場に来ない。と思っていたらちゃっかりサマソニに出たりするからますます話はややこしい。


多分これは僕が洋服をみるときに「Tシャツ」「コート」「ズボン」などと実に大雑把なフォルダわけしか持っていないことと相似形の話なのかもしれない。洋服おのおのの持ち味を僕にどれだけ教え諭したところで、そもそもの用語からして意味がわからないだろう。
言葉にできない「違い」や「コード」っていったいどこから生まれるのだろう。こういうことをあれこれと考えるのに充分な時間が、社会人という身分になってみると驚くくらいにない。ダラダラ暮らしているせいだけれど。

フジのひとこま


後ろ姿特集。


晴れ渡るボードウォーク


フィールドオブヘヴン


1歳のフジロッカー