タイガーズゲイト

虎ノ門病院という都内で、いや、全国的にとても有名な、いわゆる「一流」の病院がある。
マッチング(医学部における就活)での人気もひじょうにあって、筆記試験が難しいらしい上に倍率はとても高い。二次試験にはレントゲン読影の実技試験がるとも聞く。おそらくは全国からやる気にあふれる医学部生が実習をしに来るだろうし、周りの同級生も結構な人数が見学に行っていた。


虎ノ門病院は外観がとても個性的だ。門には大胆にトラの顔があしらわれており、ガオーッとした状態、あんぐり開いたトラの顔の上半分をくぐるような形になっている。門扉は全体にトラ柄で彩色され、一見サファリパークのような印象を受ける。ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンだ!ガオー!の歌が心なしか聞こえてくる。トラ顔の両サイドにはかわいらしく両手(両前足のことです)が添えられており、m(__)mの手みたいなことになっていてほほえましい。ガオー。
さすがにトラ柄ではないけれど病棟もトラの形を模されており、胴体部で診療が行われていて愛嬌をさそう。両後足としっぽ部はそれぞれ食堂に職員寮だ。


もちろん以上は嘘っぱちだが、久しぶりにO井手とご飯を食べる機会があって、上のようなくだらない四方山話を4年生のころ彼としていたことを思い出した。何だか「虎ノ門」ってかっこよくね?みたいなノリで。
あれから2年強、気が付けば虎ノ門病院で勉強をさせてもらう機会の一度もないままに大学を卒業してしまった。周りのみんなが意欲に満ち満ちていそうだから「何だか怖い」というふぬけた理由で、ちょっと見学しようと思っただけで夏休みをつぶし病院へ5日間通わなくてはならない(他の病院では1日か2日が一般的)のはつらいという消極的な意識で、虎ノ門病院を見学するチャンスを逸した。蛇足だがさらに言えば他の御三家(この言い方もすごいよな…)、すなわち聖路加病院、三井記念病院も一度として訪ねていない。うちの大学でそんなやつ他にいるのだろうか。


いつか虎ノ門病院の門を叩くことがあったとして、門が本当にトラの形をしていたらどうしようか。そんなわけはないとわかっていながらも、心のどこかで少しだけそんな期待をしている自分がいる。ガオー!ほんとにほんとにほんとにほんとにトラ柄だ!
トラ・オア・ノット。みなさん、答えを知っていても僕には教えないようにしてください。